山梨県
やまなし若者しごとプラン

 近年、若年者の雇用環境の悪化や就業意識の低下が大きな社会問題となっていることから、山梨県では企業誘致を始め、福祉分野、IT分野、農林業など幅広い分野において雇用の創出を図るとともに、雇用情勢の厳しい若年者に対して職業的自立を促すなどにより就業を支援することを目的として、地域再生計画「やまなし若者しごとプラン」を策定した。主な事業は、若年者向けの就職相談・情報提供を行う「ジョブカフェやまなし」の設置・運営と県外における「U・Iターン事業」の推進である。現在、サービスの利用者は順調に増加し、設定している数値目標に対し、雇用創出、就業支援ともに拡大が図られている。

1. 地域再生計画の事業内容

 社会の成熟化が進み雇用のミスマッチや生産部門の海外移転、外国人労働者の増加による雇用の場の喪失や若者の就職意識の希薄化、職業観の変化などからフリーターや新卒無業者など若年未就職者の増加が社会問題化している。

 山梨県では、地域社会の再生は、新産業の創出などによる新たな雇用の場の確保と、これを担う若年者雇用の安定にあると考え地域再生計画として「やまなし若者しごとプラン」を策定した。
本計画における事業の柱は以下の2つである。

(1) 「ジョブカフェやまなし」の設置

 15歳から34歳までの若者の能力向上と就職促進を図るもので、「カフェ」感覚で気軽に適職であるかどうかの個別カウンセリングや、就職ノウハウの伝授、就職情報の提供、職業紹介等の雇用関連サービスをワンストップで提供する。
 平成17年4月1日より、県民情報プラザ1階にセンターを設置、月曜から土曜日まで営業している。


「ジョブカフェやまなし」の様子

(2) 無料職業紹介「U・Iターン事業」の推進

 山梨県内への就職を希望する者と山梨県内企業の求人情報とのマッチングを目的とする事業である。

 平成16年12月3日に無料職業紹介事業の届出を行い、平成17年1月11日より山梨県の東京事務所内に「ふるさと山梨就職相談室」を設置し営業している。

 
「ふるさと山梨就職相談室」の様子(左)、「ふるさと山梨U・Iターン就職フェア」の様子(右)

 

2. 計画策定の経緯

 平成14年就業構造基本調査によると、山梨県内の若者(15〜24歳)の完全失業率は7.5%で、15歳以上全年齢層の完全失業率3.8% に比べて約2倍であり、全国平均より低いものの、山梨においても若者の失業問題は深刻であった。この要因としては、企業において、技術革新の進展に伴う専門的知識・技能を有する人材へのニーズが強まる一方で、人件費抑制の観点から新卒採用を大幅に抑制していること、また、若年者において、就業意識や職業能力に低下など若年者自身に起因する問題があること、が挙げられる。

 このような若年層の雇用の悪化や専門的知識・技能を有する人材の不足は、中長期的な競争力・生産性の低下など地域社会の活力低下を招く懸念があることから、山梨県は、平成15年に「雇用創出・就業支援プログラム」を策定した。その中で、若者向け就業支援サービスを行うセンターの設置が検討されていたが、センター設置は厚生労働省の支援が必要であり、庁内外の調整もあって苦慮していた。

 そこで、山梨県では「やまなし若者しごとプラン」を地域再生計画として認定申請し、政府の全面的な支援を受けて本事業を推進することとした。この計画は、労働局、ハローワーク、経営者協会、高校・大学、雇用能力開発機構、商工会議所・商工会など外部との連携、県庁内においては職業能力開発課、教育委員会、東京事務所などとの連携が必要であったが、認定を受けたことによって、各機関の役割分担やセンター運営に当たっての組織体制などにおける連携がスムーズに運び、実施へ向けてスピードアップを図ることができた。

 

3. 目標と成果・進捗状況

(1) 再生計画における数値目標と進捗状況

指標 目標 進捗状況
若年者の雇用創出 目標:500人(19/3月末) 進捗:380人(17/9月末・進捗率76%)
若年者の就業支援 目標:11,600人(19/3月末) 進捗:8,259人(17/9月末・進捗率71.2%)
高校生の就職内定率 目標:15/3月末新卒者の95.4%のアップ 進捗:96.5%(17/3月末)
大学生等の就職内定率 目標:15/3月末新卒者の86.7%のアップ 進捗:85.8 %(17/3月末)

(2) 構造改革特区の規制特例措置により実施する取り組みその他の関連する事項

 構造改革特区の規制特例措置により実施する取り組み・その他の関連する事項としては、平成15年11月に策定した「雇用創出・就業支援プログラム」のなかから、地域再生計画に関連する5つの事業を中心に実施し、計画を推進しており、その進捗状況は下記の通りである。

@ キャリア教育推進事業
 小中学生を対象とした職場見学会や仕事体験等を実施し、早い段階から望ましい職業観・勤労観を醸成する。
・子供参観日:8校191名(H16)
・ジュニアトライワーク:3校159名(H16)

A 高校生インターンシップ推進事業
 高校生のインターンシップを推進するため、産学官の関係機関を構成員とした「インターンシップ推進連絡協議会」を設置するとともに、講演会や啓発活動を行う。
・産学官の関係機関による「インターンシップ推進連絡協議会」の設立
・県内各高校においてインターンシップや講演会を開催

B 若者向け職業訓練
 若年離職者を対象とした新たな職業訓練コース(PCメンテナンスサービス科、ショップマネジメント科)を設け、若年者の就業促進を図る。
・PCメンテナンスサービス科:23人(H16.10.1〜12.24)
・ショップマネジメント科:16人(H16.7.8〜10.7)

C キャリアパスポート交付事業
 キャリア形成の促進を図るため、教育訓練や資格取得を明らかにしたキャリアパスポートを発行する。
・キャリアパスポートの発行件数:142件(H17.1末現在)

D 新たな雇用機会の創出
 創業・ベンチャー企業の育成や新規・成長分野の育成、さらには企業誘致の推進等により雇用の拡大を図る。

 

4. 支援措置に対する評価

@ 地域再生雇用支援ネットワーク事業の集中化に関する評価
 ふるさと山梨就職相談室(東京事務所に設置)を設置し、U・Iターンにかかわる無料職業紹介事業を実施するにあたり、山梨労働局から無料職業紹介事業の届出にかかわる支援を受けることができた。

A 若者向け就業支援センターへの支援と職業紹介事業との十分な連携の確保に関する評価
 「若年者地域連携事業」を県が企画した内容で県が希望する団体に委託してもらうことができた。
労働局等関係者との連携がスムーズに進み、短期間でハローワーク併設が可能となった。

B 地方公共団体が行う無料職業紹介事業の公共職業安定所との求人情報等の共有化に関する評価
 ふるさと山梨職業相談室(東京事務所に設置)において、U・Iターンにかかわる無料職業紹介事業を実施するにあたって、県内公共職業安定所から求人情報の提供を受けることができた。

 

5. 総合的評価

 本事業の大きな柱である「ジョブカフェやまなし」は、スタートから約8ヶ月で利用者が約4,000人、カウンセリング件数も延べ2,100人にのぼり、一日平均利用者数は20人、カウンセリング人数は11人で予想以上の反響である。

 また、若年者の雇用創出、就業支援という面においても順調に拡大しており、一定の効果は得られているものと考えられる。しかし、企業側の求める質の高い人材という点において若年者側の条件と折り合いがつかない、いわゆる「ミスマッチ」については解消が進んでいるとはいえず、今後の当事業の課題となっている。

 地域再生計画認定制度については、県が国や関係機関と連携して職業紹介を含めた就業支援センターを設置するのは初めての試みであり、各機関の役割分担やセンター運営に当たっての組織体制などにおいて調整が難しい面もあったが、計画の認定により連携がスムーズに運んだ。当センターは地域再生計画を利用しなくても設置は可能であったが、認定を受けることにより、スピードアップが図られたことは評価できる。