2. 地域再生計画の実施
(1) 進捗度(評価)
八王子市の再生プランでは、ベンチマークする事前の評価基準として、第一に、最大2,676世帯の就労支援、第二に、指定管理者制度活用による指導員等の雇用創出で245名の雇用増大、第三に、学童保育所の設置による調弁や物品購入による地域経済への持続的波及効果を挙げている。
再生計画のスタートから間もないが、「学童保育所整備計画」が先行していたことから、学校施設利用による学童保育所設置や指定管理者制度導入は順調に進んでいる。就労支援や経済波及の効果を正確に測定することは難しいが、計画は着実に効果を上げている。
平成18年度募集段階では、新たに4つの学童保育所が開設され、69小学校区に対してすでに54学童保育所となった。うち15が小学校施設利用である。指定管理者制度も順次導入されており、平成18年度新開設の4学童保育所の場合、いずれも17年7〜8月に募集、10月まで書類審査とプレゼン審査が行われた。
(2) 効果(メリット・デメリット)
学童保育所が小学校施設内、低学年児童にとってもっとも安全な場所、安全な移動動線のなかで着実に増加している。そのことが地域社会に与える安心効果は大きい。父母にとっても、学童保育の空白が埋められ、民設民営「学童クラブ」に比べ施設、設備水準が向上して満足感を与えている。ただし、児童にとって、学校生活との意識的区分けが難しくなる可能性は残る。
民設民営「学童クラブ」の場合、必ずしも本位でない運営からの撤退もある。これも、指定管理者制度が導入されたことで、それまでの「学童クラブ」経営グループにも応募チャンスが開かれた。
首都圏でありオープンな募集によって民間教育産業からの参入もあるため、自主経営の父母グループが指定を得ることは容易ではない。だが、外部学識者を含むプレゼン審査が導入され、公開性、公平性が保たれたことで、反発は比較的小さく押さえられた。実際、それまでの自主経営グループがNPO法人格を取得し、審査を通過して管理者指定を受けた例も生まれた。
さらに、学校に学童保育所が併設されたことで、学校教育の現場と保育(福祉活動)の現場運営NPOなどが、父母を通じて協力、協働を始めている。
(3) 地域資源の活用
八王子市でも、少子化によって児童数は減少し、空き教室が生まれているが、一方では女性就労の増加で学童保育のニーズは高まっている。低学年児童の放課後の安全確保という意味でも、公共施設の有効活用の効果は大きい。
首都圏であることから、保育、教育の専門組織や、ボランティア的活動を担う組織や人材は豊富である。公設民営による学童保育所の速やかな増設と、指定管理者制度の適用は、これらの能力を効果的に吸収する方策になっている。民設民営の「自主学童クラブ」運営グループの熱意や活動蓄積も、ただちに切り捨てられてはいない。
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