2. 地域再生計画の実施
(1) 進捗度(評価)
釜石市の再生計画では、評価のベンチマーク基準として、第一に、雇用機会の創出について平成20年度までに約200人増、第二に静脈物流貨物量を平成22年度までに416.4千トン、第三に静脈物流航路数は平成22年度までに6航路を示している。
再生計画のスタートから間もなく、現在これらの進捗は緩やかである。雇用は現在50%程度の進捗となっているが、静脈物流の貨物量はまだ47千トン(11%)にとどまり、航路数も2航路である。しかし、市は、再生計画が順調に進捗し、効果も現れているととらえている。
これは、第一に、着実な正面作戦をとっており、中長期的視点に立って経過を把握していること、第二に、18年度には物流基盤の整備レベルが格段に上がるので、その効果が本格的に作動するのを見越していることがある。
さらに、主要事業の進捗状況を見ると、水産加工廃棄物リサイクル事業は、これまで未利用だったワカメやコンブなど水産加工廃棄物に着目したもので、民間5社が(協)マリンテック釜石をつくり、機能性食品原料の精製を開始している。
また、自動車リサイクル法の施行にあわせ、岩手県内自動車関連53社によって(協)岩手オートリサイクルセンターが設立され、使用済み自動車リサイクル事業に取り組んでいる。このほか、エコタウンプラン外の多くのバイオ関連リサイクル事業、産学官連携事業が推進されている。
(2) 効果(メリット・デメリット)
再生計画は、エコタウン、リサイクルポート指定などとあわせ、釜石市の産業転換戦略を国が理解し、強力に後押ししている証明と市民に受け取られている。同時に再生計画は、市が官民で推進中の戦略的事業について、その相互関係を確認し、取り組み方針を明確化することとなったので、市民、事業者との方向性の共有、連携のためのツールともなっている。
人口減少や経済指標の低迷など、長期的トレンドの逆転には至っていないが、(協)マリンテック釜石の設立や(協)岩手オートリサイクルセンターの立地など、港湾地区の施設整備を中心に、転換戦略の確実な進展が市民の目に見えやすいものとなってきた。また、18年度には、仙人峠道路、釜石港湾口防波堤、公共ふ頭拡張工事の完成などによって、物流基盤の整備レベルが格段に上がる節目となる。その効果への市民、事業者の期待は大きい。
こうした事業の進展に伴い、この大きな転換戦略を主導してきた市役所への信頼感が培われている。また、事業の方向性についての、市長以下、市役所推進グループの確信も堅いものとなっている。
(3) 地域資源、地域能力の活用
産業転換に際して、釜石市の人的蓄積やネットワークは大きい。鉄鋼業を筆頭に東北屈指の工業地帯だったことから、ものづくり産業の事業所が多いことは大きな強みである。研究機能にも、岩手県水産技術センター、海洋バイオテクノロジー研究所、大槌町の東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター、大船渡市の北里大学水産学部などがある。
再生計画の事業内容は、これらの事業者、研究者と事前協議を進めたものである。むしろ、これらの地元事業者や研究者の意欲を事業化した色彩が強く、計画推進に緊密な協力、協働関係が構築されている。
その点で最大の資源は、これらのソフト資源をつなぎ合わせ、粘り強くプロジェクト化を進めてきた釜石市役所であり、その組織内に台頭してきたニューディールグループの存在であると言える。その事業化への熱意と能力は大きい。
一方、地域のハード基盤は新日鉄に依存し、公共的な社会基盤の整備は大きく遅れていた。しかし、道路・港湾などの整備が進み、平成18年度には大きな節目になる。とりわけ港湾のポテンシャルは非常に高いものになる。岸壁は東北最大水深(-14m)、岩手県内唯一の耐震強化岸壁であるが、完成する釜石港湾口防波堤は水深世界一(-63m)になる。
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