北海道 函館市
函館国際水産・海洋都市構想の推進
〜水産・海洋に関する学術・研究拠点都市の形成〜

 函館市は3方を性質の異なる海域に囲まれ、良港に恵まれるなど地理的な条件が優れ、歴史的にも海運や水産など海洋に関わる施設や産業が集積し、「海」との関わりが大きい地域に位置している。
  かつては北洋漁業の拠点として水産物の水揚げに対応して、加工および関連する機器にかかる産業集積が進み、港湾物流の拠点であることから造船業も基幹産業として位置付けられていた。こうした産業群が厳しい環境となる中で、函館市では当地域の公的試験研究機関や企業に蓄積された、水産・海洋に関する資源やポテンシャルを活用することにより、「国際的な水産・海洋に関する学術・研究の拠点都市」の形成を目指し、もって我が国の科学技術の高度化に貢献するとともに、革新技術・新産業の創出を通じ、地域経済の活性化を図ることとしている。
1. 地域再生計画策定について

(1) 地域再生計画事業内容

 函館市は北海道南西部に位置し、人口は平成17年国勢調査で29万4千人であり、北海道内では札幌市、旭川市に次ぐ人口規模をもち道南圏の中核都市である。旧来から集積のある水産業および水産加工業や、漁労および加工にかかる装備・機械産業、造船業などで特徴のある企業集積が見られる。またテクノポリス地域に指定されて以来、現在の(財)函館産業振興財団を中心に、北海道大学水産学部をはじめとする学と地域内企業との連携も高まってきており、更に「海」にかかる多様な資源を生かした地域経済の活性化に向けた取り組みが求められている。

 また、函館市は旧来の基幹産業における課題が大きくなる一方で、幕末の開港時から蓄積された文化財や街並みは独特の景観と旅情を醸し出しており、水産資源の新鮮さや豊富さも相まって観光産業が地域経済の大きな柱となってきており、産業と観光が相乗効果を生みながら地域づくりが進むことが求められている。

こうしたことから「函館国際水産・海洋都市構想」では、基本方針として 
@ 水産・海洋に関する学術・研究機関の充実および誘致
A 北海道大学大学院水産科学研究院の研究機能の充実
B 水産・海洋関連産業(水産業、水産加工、造船機械金属、海運)と学術・研究機関との連携強化
C 水産・海洋関連企業の誘致および企業化
D 学術・研究と融合した観光の振興
を挙げている

(2) 計画策定のプロセス

 「函館国際水産・海洋都市構想」は函館海洋科学創成研究会による検討をもとに、平成15年3月に策定され、平成15年6月には構想実現に向けて、函館国際水産・海洋都市構想推進協議会が設立された。

 函館海洋科学創世研究会の会長は「クリエイティブネットワーク」代表幹事であり函館商工会議所副会頭の沼崎弥太郎氏がつとめ、事務局運営は函館市企画部が行った。

2. 地域再生計画実施について

(1) 進捗度(評価)

 同構想では、産学官での学術・研究機関の整備を推進しており、これまで具体化したものには、北海道大学水産学部マリン・フロンティア研究棟(平成16年5月供用開始)、公立はこだて未来大学共同研究センター(平成16年4月設置)、函館高等工業専門学校地域共同テクノセンター(平成16年4月整備)、アルガテックKyowa海藻技術研究所(平成15年6月開所)がある。

 今後の取り組みとしては、函館臨海研究所(平成17〜18年度整備)、北海道大学マリンサイエンス創成研究棟(平成17年度整備)、函館市産学官交流プラザ(平成17年度整備)がある。また、「国際水産・海洋総合研究センターの整備」は、構想の中核研究施設として計画されているものであり、平成17年度ではセンター全体像や施設計画策定のための整備調査を実施しているなど、地域の研究機能の強化・充実が図られている。

 産学官の連携による、研究・技術開発の推進については、「マリン・フロンティア科学技術研究特区(平成15年8月)の認定を受けるとともに、都市エリア産学官連携促進事業(文部科学省、平成15年6月選定)、21世紀COEプログラム(文部科学省、平成16年7月認定)、地域新生コンソーシアム研究開発事業(経済産業省、平成16年8月認定)などにより、地域の学術・研究機関と企業との共同研究が順調に進展している。

(2) 効果(メリット・デメリット)

 「函館国際水産・海洋都市構想」の策定により、地域をあげてこれまでの蓄積とポテンシャルを活用しながら、新産業および新たな文化の創出に向けた取り組みが進んでいるところであるが、地域再生計画に認定されたことにより、地域内の産学官の連携に加え、関係各省庁に於いて当地域の特性について認識が深まることとなっている。
 こうした中で、多方面での理解と事業参画の可能性について検討することが重要である「国際水産・海洋総合研究センターの整備」のための「特定地域プロジェクトチーム」の設置が支援措置として適用されたことは、具体化に向けた力強い追い風と期待される。

 また、函館国際水産・海洋都市構想推進協議会では、国際水産・海洋総合研究センターをはじめ学術・研究機関の集積を図る取り組みのほか、地域と学術・研究機関との連携、および観光と学術研究の融合、水産・海洋都市民生活の調和に関する事項も部会を構成して検討・推進を図っている。その中で、「海」をテーマとした市民参加型の「オーシャンウイーク」の開催などは、市民ひとりひとりが海を知り、海と親しみ、海との生活の関わりを考え、構想への関心を高める機会となっている。

(3) 地域特有の資源の活用

 より具体化に向けた進展が期待される「国際水産・海洋総合研究センター」の整備予定地は、旧函館ドック跡地の一部の約10ヘクタールの長方形(500×200m)の用地で、3方を海面に面しており、海水の利用や船舶の直接の接岸が可能であり、海水を利用する試験研究が容易であるほか、国内ばかりでなく海外の海洋調査船や練習船の寄港を可能とし新たな研究交流の可能性が高まることとなる。

 函館市は実現に向けた検討に資するため、平成17年度予算に調査費を計上し、平成16年5月に公表した「国際水産・海洋総合研究センターの整備に向けた提案書」の内容について、機能の詳細や段階的な整備などに検討を進めている。また、平成16年5月には、同センター予定地約10ヘクタールを含む、旧函館ドック跡地(23ヘクタール)を函館市土地開発公社が購入しており、整備の基礎条件を確保している。

 なお、当用地のうち函館港内に面した部分については、調査練習船の接岸のための公共岸壁として整備するよう国へ働きかけも行われている。


3. 支援措置について

【「国際水産・海洋総合研究センターの整備」のための「特定地域プロジェクトチーム」の設置】

 「国際水産・海洋総合研究センター」の必要性と整備方針・機能・整備手法等についてとりまとめた、「国際水産・海洋総合研究センターの整備に向けた提案書」が平成16年5月に公表されている。

 主な施設整備内容は、共同研究や研究活動の支援機能を持つ共同利用施設のほか、道や国の試験研究機関の施設エリア、共同実験施設、水産業の振興に資する施設などのほか、海洋調査船や練習船の寄港が可能な岸壁および関連施設などが含まれている。

 特定地域プロジェクトチームは、「国際水産・海洋総合研究センター整備検討会議」と称し、当センターの整備について総合的に議論するとともに、具体的な課題と解決策について検討することを目的としている。

 プロジェクトチームは10機関27名の委員から構成されており、函館市、函館商工会議所、函館国際水産・海洋都市構想推進協議会のほか、北海道および国土交通省北海道開発局は本庁および札幌や函館の出先部門、試験研究機関は北海道大学および独立行政法人水産総合研究センターが、国は文部科学省、水産庁、経済産業省北海道経済産業局が参画しており、事務局は函館市企画部に置き、座長は函館市助役が担当している。

 平成16年10月1日に第1回会議を開催し、当センターの整備にかかる説明と意見交換をしており、平成17年度は各委員への個別説明を行うほか、18年1月には別途進めている函館市が委託した調査結果を基に会議を開催することとなっている。

 本センター構想実現に向けて地域内の機関ばかりでなく、今後関わりが大きくなることが見込まれる各機関の担当者との継続的な情報交換が可能となることにより、より効果的な事業計画づくりが可能となった。

【民間研究機関等用地の利用促進のための日本政策投資銀行の低利融資の活用】

 「国際水産・海洋総合研究センターの整備に向けた提案書」では、同センターに隣接して、民間研究機関等向けの用地整備を予定しており、これらの施設立地に当たって日本政策投資銀行の低利融資の活用を図る。