1. アウトソーシングに至った経緯
1−1.3つの自治体で異なる取り組み状況
これまで自治体職員を配置していた学校用務員、事務員、学校図書司書を、外部委託ないし非常勤化を進めている九州の自治体として、福岡県久留米市、宗像市、熊本県荒尾市があげられる。各自治体が外部委託や非常勤化を進めている業務は、当該分野に市職員を配置していたかどうかに規定されている(事例表
9- 1)。久留米市の場合は、平成13年度から学校用務員(久留米市では校務員と呼称)の外部委託を進めているが、事務員や司書については既に昭和50年代に市職員からの転換が終了している。また、早くから行政のスリム化を推進している宗像市の場合は、平成6年度から学校用務員・事務員の外部委託・非常勤化に取り組み、平成16年度時点でほぼ終了している。なお、この場合の事務員は、各学校に配置されている県職の事務員とは別に市が派遣していた職員である。学校図書司書は平成15年4月の合併と共に19校で非常嘱託職員に切り替え終了している。荒尾市では、平成16年度から学校用務員の外部委託と司書の非常勤化に取り組んでいる。
事例表 9- 1 外部委託ないし非常勤化に取り組んだ業務分野
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対象学校数 |
学校用務員 |
事務員 |
司書 |
備考 |
福岡県久留米市 |
小学校(27校)
中学校(13校)
高校・養護学校(3校) |
○ |
× |
× |
平成13年度からスタート。平成16年度時点では、7ブロック中3ブロックを終了 |
福岡県宗像市 |
小学校(14校)
中学校(6校) |
○ |
○ |
○ |
用務員は平成6年度から、事務員は平成8年度からスタート。平成16年度時点では、用務員は終了、事務員はほぼ終了。司書は平成15年度に19校で非常勤化を実施 |
熊本県荒尾市 |
小学校(12校)
中学校(5校) |
○ |
× |
○ |
用務員、司書ともに平成16年度からスタート。平成16年度時点で、用務員は17校中5校、司書は中学校5校中3校で実施 |
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1−2.上位計画で方向性を明示
いずれの自治体においても、上位計画で効率的で効果的な行財政運営を推進する方向性が明示されている。
久留米市の場合、平成8年4月に策定された「第3次行政改革推進要綱」に「民間活力活用の推進」が明記されており、平成11年度に設置された「行政改革等に関する調査特別委員会」が、学校校務員の外部委託を提言したのが始まりである。翌12年度には、上記の委員会の提言や財政構造改革計画の考えを受けて、久留米市教育委員会が校務員業務の民間委託を提案するに至る。
宗像市の場合は、学校用務員の外部委託化を明記したものはないが、平成8年度を開始年度とする「第2次宗像市行財政改革大綱」で「効果的・効率的な行財政運営の推進」が掲げられている。宗像市は、もともと職員数が極端に少なくスリム化されており、外部化が可能な業務については、出来る部署から順次外部化を進めてきている。現業部門の比率は低く、学校用務員・事務員・学校図書司書の外部化ないし非常勤化の取り組みは、他の現業部門と歩調を合わせつつ進められた。
荒尾市においては、平成16年1月に策定された『荒尾市行政改革大綱・財政健全化緊急3か年計画〜「元気な荒尾 力強い荒尾」を目指して〜』で、「行政改革及び財政健全化緊急3か年実施計画」が示され、学校用務員の外部委託化や司書の非常勤化が明記されている。学校用務員等の外部委託化を急ぐ背景には、極めて危機的な状況にある荒尾市の財政事情がある。平成14年度の普通会計の経常収支比率は93.5%にも達しており、硬直化が進んでいる。また、荒尾市の職員数自体は全国と比較して平均的なポジションにあるが、年齢構成が団塊世代を中心に50歳代職員で全体の半数以上を占めるなど偏りがみられ、行財政運営上の大きな課題となっている。
1−3.学校用務員は外部委託、事務員と司書は非常勤化
3市とも学校用務員の外部委託を進めている。ただし、委託先は久留米市が(財)久留米市総合管理公社であるのに対して、宗像市と荒尾市がシルバー人材センターである。
久留米市では平成13年度から久留米市総合管理公社への委託を始めており、地域的にまとまりのある6〜7校を1ブロックとする7ブロック(43校)のうち、現在3ブロック(11小学校・7中学校)での外部委託を進めている。一方、宗像市の場合、早くから行財政改革を積極的に推進してきており平成16年11月現在で、学校用務員は小中学校20校中14校がシルバー人材センターへの外部委託、1校が臨時職員(児童数18人の離島の小学校)、5校が未配置で、業務自体の削減も進んでいる。荒尾市の場合は、平成16年度から取り組みを開始しており、小中学校17校のうち、平成16年11月現在で5校(ただし、年度当初は4校分)の業務をシルバー人材センターに委託している。
学校事務員については、3市の中では宗像市が非常勤化を進めている。ただし、平成8年度のスタート当初は、民間の人材派遣会社への外部委託を進めたが、その後、非常勤化(嘱託)に切り替えた経緯がある。現時点では、20校中17校で非常勤嘱託職員が配置されており、1校で未配置、中学校2校では市職員が勤務している。
学校図書館の図書司書は、宗像市と荒尾市が非常勤化を進めている。旧宗像市と旧玄海町が平成15年4月に合併してできた宗像市は、合併前の平成14年度には図書司書資格を有する5名の市職員、11名の臨時職員(以上が旧宗像市)、3名の常勤嘱託職員(旧玄海町)で対応していたが、合併後の平成15年度からは司書有資格者を対象に新規公募を行い、19名全員が非常勤嘱託職員として勤務している。
荒尾市の場合、中学校5校に対して市職員を1名ずつ配置していたが、平成16年度から非常勤化を進めている。5人のうち司書資格を有した2人については異動せず、資格を持たなかった3人を市に引上げ一般事務職に就いてもらい、図書司書資格者を公募によって新規雇用した。新規に採用された3人は、非常勤の6時間勤務体制で、以前に比べて2時間ほど勤務時間が短くなっている。平成17年度には2人についても非常勤化を図る予定である。
1−4.ブロック毎の手法をとる久留米市
学校用務員の外部委託を進める手法として、久留米市は6〜7校を単位とするブロック毎に導入する方法を採っている(事例図 9- 2)。委託先の久留米市総合管理公社は、民間出身の55歳以上の人を対象に公募し校務員を雇用しており、その前職は、例えば自衛隊員やデパートの販売員などバラバラで、当然のことながら能力としても差がある。そこで、業務がある程度軌道に乗るまでの体制として、市が指導員(市職員を久留米市総合管理公社が管理運営する市民センターに派遣して、ブロック内の6〜7名の校務員の指導にあたる)を派遣する体制をとっている。したがって、市の派遣による指導員は将来的には段階的に無くす方向で考えられている。
なお、指導員には文書送達兼連絡指導員と、専任業務指導員の2種類がある。以前の学校校務員は、週に3回(月・水・金)、各学校と教育委員会(久留米市役所内)との間の文書等のやり取りを行う連絡業務があり、市役所から遠距離にある学校によっては半日近くがこの業務に割かれていた。そこで、ブロックごとに配置された指導員に、この文書等の送達・連絡業務を集約化し、指導員がブロック内をとりまとめて教育委員会との間を行き来することで、各学校に配置された学校校務員は、各学校での通常業務に専念してもらうのがねらいである。しかし、文書送達兼連絡指導員は、週に3日は文書送達業務等で割かれてしまい、主に火・木の2日しか各校務員の指導にあたれないことになる。各学校に公募で配置されたばかりの校務員への指導が十分に出来ない状態になるので、最初の1年間については、別に専任業務指導員を1名付けることで対応しようというものである。
また、ブロックごとの導入を進めることで、ブロック内の指導員・校務員による共同作業を実施し、効率化を図るとともに1人では困難な作業を行っている点が特徴である。
1−5.シルバー人材センターの活用図る宗像市と荒尾市
シルバー人材センターに学校用務員業務を委託した宗像市では、シルバー人材センターで各地域に長年居住している高齢者の中から適切な人を選抜して各学校で就業する方式をとっている。労働時間は市職員の7時間30分から、7時間に短縮された。ただし、これはあくまでも市とシルバー人材センターとの契約上の事で、用務員として従事しているのは各地域に居住している高齢者であることから、ボランティア活動として献身的に業務に従事する例もみられ、過去の経験を生かしたり、多様な能力をもつ人材の登用ができたりして、むしろサービスの幅や内容は広がったと考えられる。なお、現在は1人が専任で就業しているが、平成17年度からは最低2人が交替で就業する体制に変更予定である。
同様にシルバー人材センターに委託している荒尾市では、1週間ごとに男性と女性が交互に就業している。剪定作業や補修作業など外回りの仕事は男性が、細やかな清掃業務や花壇の管理などは女性が行うなど、それぞれの特性を発揮して業務にあたることで、学校側からの評価を得ている。特に問題が発生しない限りは、1年〜2年は固定する予定である。労働時間は6時間勤務で、以前の8時間から2時間短縮されている。
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