3. 住民の反応
アウトソーシングにあたっては、平成16年4月当初から職員が総入れ替えになることで関係者から衛生面や危機管理面での不安や批判が多く寄せられていた。
そのため、庄原株式会社では、4月の業務移管にあわせて、1ヶ月前の3月から社員に給食調理研修を行ったり、保育所では研修を兼ねて勤務させるなど、園児・保護者・社員の三者間での安心感醸成に努めた。
一方、実際に庄原株式会社による運営が開始されると、給食調理においては衛生面において十分配慮しながらも、徹底したコスト意識のもと従来以上に効率的に業務を行っていることや、保育所運営にあたっては、延長保育時間の拡大や看護師の配置など保護者からのニーズにも柔軟に対応できていることなどから、アウトソーシングに対する関係者の評価は高まっている。その結果、三日市保育所においては、委託前に66名(平成16年3月末)の園児数であったのが、74名(平成16年9月末)に増加しており、その取り組みは市内の保護者の方々から期待されていることがうかがえる。
なお、三日市保育所においては、平成16年9月に保護者や関係者に対して、顧客満足度調査を実施済みである。市役所、庄原株式会社とは独立した評価機関として、市内にある広島県立大学(平成17年4月から県立広島大学に名称変更)にその調査を委託しており、現在調査報告書を作成中である。
4. アウトソーシングの問題点と改善方法
( 他の保育所との連携 )
保育所業務については、庄原株式会社に委託されたことで他保育所と運営方法が異なることから保育所所長会などの報告会を他保育所とは別に市の担当者と行っている。そのため、市としても事務が煩雑になっている面があることから、行政による統一した運営体制を整備する必要がある。
( 長期休暇時の対応 )
給食調理業務については、小学校が春夏冬休みの長期休暇に入ると通常の業務が少なくなってしまう。そのため事業開始当初の夏休みについては、コスト意識と衛生面について研修を行ったが、今後は長期の休みになった場合に備え、市役所からプールの管理委託など、他の業務を受けるようにしなければならない。
( 業務の拡大 )
市からの受託だけでなく、市以外からの受注も視野に入れた営業活動をしなくてはならない。そのためには、会社としても研修を重ねながら社員の能力を向上させ、様々な業務を受託できる体制を整える必要がある。
また、現在の資本金1,000万円では上記受託業務以外の新規展開が困難であり、市の全額出資による株式会社ということもあり、営利追求を目的とはしていないが、業務を拡大することによって、少しでも利益を内部留保し、会社として体力をつけていく必要がある。
5. 今後の展望
市としては、平成14年2月に策定した「第3次庄原市行政改革大綱」に基づき、今後も総合体育館や田園文化センター、市民会館等の管理・運営を庄原株式会社へ移管する予定であり、更にアウトソーシングは進む見込みである。
一方、庄原株式会社においては、短期的には、ある程度の業務が市から委託されても対応可能な態勢にある。しかし、長期的にみると、今後はより収益性の高い業務を、庄原市内だけでなく、周辺市町村からも受託できるかが、会社の存続にかかわってくるといえる。
こうした業務拡大には必然的に増資も検討すべきであるが、実際に増資を行う際には、行政だけでなく、市民からの出資も募り、市民参画型の経営に転換していくことが大切ではないかと考える。出資することにより、「おらが会社」としての意識が醸成され、行政と市民が一体となった、より地域に密着した経営基盤が確立され、住民や民間会社からの受託にも期待できると思われる。
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