札幌市コールセンター「ちょっとおしえてコール」は、日本初の市政総合案内コールセンターである。実績のある民間企業へのアウトソーシングによって、わずか1年でシステム稼働に至り、また約6割のコスト削減効果が見込まれる。問い合せた市民は、民間企業が蓄積する迅速かつ丁寧な電話対応などを高く評価しており、縦割り行政の象徴であった「たらい回し」を克服している。また、本事例のコールセンターは、市民からの問い合わせ対応のみならずNPMを展開する基本ツールの役割を担う可能性も生じており、進展の鈍い案内・受付及び電話交換業務におけるアウトソーシングの先進的事例と位置づけられる。
 

3. 住民の反応

 コールセンターは、アウトソーシングに対する住民評価を得るため、問い合せた市民に対して満足度調査を年間2回実施している。平成16年9月の満足度調査(10点満点・回答数694件)では、平均点9.52点、8点以上が96.0%と高い評価を得ている。
 民間コールセンター企業が蓄積する迅速かつ丁寧な電話対応ノウハウや、個人情報管理等のセキュリティポリシーの明確さなどが高い評価につながっている。また、平成15年度のコールセンターへの問い合わせで最も多かった質問項目「戸籍証明・住民票・印鑑証明について(1,674件)」においても、累積件数(28,709件)のわずか5.8%を占めるに過ぎず、市民からの問い合わせは多種多様である。こうした多種多様な問い合わせをコールセンター1ヵ所で対応可能となったこと自体が、従来の「たらい回し」といった縦割り行政の弊害を被ってきた市民からは実感できる顧客志向の行政改革の一つとして評価されるであろう。

4. アウトソーシングの問題点と改善方法

 課題としては、行政業務の代替が期待されるアウトソーシング効果の視点から、コールセンター入電件数が本庁代表入電件数と比較して少ない点があげられ、その改善としてコールセンターの認知度を高めていく必要がある(事例図 1- 3)。

事例図 1- 3 本庁代表電話とコールセンターの入電件数比較
事例図1-3 本庁代表電話とコールセンターの入電件数比較

 また、平成15・16年度の札幌市コールセンター利用者の延べ人数(29,651人)は、札幌市人口の2%に達しておらず、利用者に偏りがある可能性も否めない。コールセンターが後述するNPMを展開する基本ツールの役割を担うためにも、幅広い市民からの入電件数の増加、認知度の向上が必要不可欠である。
 入電件数の増加に関しては、コスト面からも望まれる。これまで入電件数の増加に伴い1件あたり対応コストは削減しており、入電件数の増加及び1件あたり対応時間の減少によってコスト削減の余地がある(事例図 1- 4)。
 ただし、市民満足度調査では、入電件数の増加にともなってコールセンターへの電話回線が混線することでつながらないといったマイナス評価を得ていることから、入電件数の増加に対応してオペレータ席の増設もあわせて検討していくことが必要である。

事例図 1- 4 コールセンター1件あたり対応コスト削減の可能性
事例図1-4 コールセンター1件あたり対応コスト削減の可能性

 1件あたり対応時間の減少に関しては、コールセンターに入電した際の一次対応回答率を80%、対応時間を5分以内と数値目標が設定されており、実績では回答率98.8%(平成16年9月現在)、対応時間3分半程度(平成16年8月現在)といずれも数値目標を達成している。今後も回答用データベースを充足しながら、入電件数の増加に対処可能な対応時間の減少を図るべきである。

5. 今後の展望

 以上のように、アウトソーシングによる市政総合案内コールセンターは、本庁代表電話業務の代替量に関して課題を残しつつも、民間企業の有するシステム開発能力やテレマーケティングノウハウを活かして、非常に大きいコスト削減効果や市民サービス向上を実現している。また、こうした目に見える成果を短期間で示したことも、実績のある民間企業へのアウトソーシング効果といえよう。
 総合案内コールセンターは、顧客である市民の問い合わせに対して、迅速かつ丁寧な対応を行うことで、市民と行政の信頼関係を築くツールとして有効に機能しており、また回答用データベースを市職員間のナレッジマネジメントに活用して、市政運営の効率化を一段と図る仕組みづくりが検討されている。
 今後は、コールセンターが問い合わせ対応に加えて、市民の行政施策に対する評価や意見を収集し、それを受けて市職員が市政運営・企画に反映する行政マネジメント・サイクルの要となるよう、NPMを展開する基本ツールに位置づけていくことが重要である。
また、他の自治体においても、自治体規模が大きくなることで起こりうる市役所と区役所間や職員間などの情報非共有を改善し、市民サービスの向上を図る行政運営手段として札幌市コールセンターのアウトソーシング事例を参考に取り組むべきであろう。

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