桑名市はPFI法に基づき「桑名市図書館等複合公共施設特定事業」(平成13年6月:実施方針の公表、平成14年4月:落札者決定)を実施しており、平成16年10月に桑名市立中央図書館を含む複合公共施設「くわなメディアライヴ」が開業している。施設構成は1階が多目的ホール、プレイルーム(託児室)、生活利便サービス施設(カフェ)、2階が保健センターと勤労青少年ホーム、3・4階が図書館となっており、本施設の維持管理業務だけでなく、従来市が実施してきた図書館運営業務部分を民間事業者に委託するという運営重視型のPFI事業となっている点に大きな特徴がみられる。
 

1. 事業概要

 桑名市はPFI法に基づき「桑名市図書館等複合公共施設特定事業」(平成13年6月:実施方針の公表、平成14年4月:落札者決定)を実施しており、平成16年10月に桑名市立中央図書館を含む複合公共施設「くわなメディアライヴ」が開業している。
 施設構成は1階が多目的ホール、プレイルーム(託児室)、生活利便サービス施設(カフェ)、2階が中央保健センターと勤労青少年ホーム、3・4階が中央図書館となっており、本施設の維持管理業務だけでなく、従来市が実施してきた図書館運営業務部分を民間事業者に委託するという運営重視型のPFI事業となっている点に大きな特徴がみられる。
 事業方式としては、民間事業者が図書館等複合公共施設を設計・建設・所有(土地は市が所有)し、平成46年までの30年間にわたって施設の維持管理業務及び図書館運営業務の一部を遂行した後、市に所有権を無償譲渡するBOT(Build Operate Transfer)方式が採用されている。
 本PFI事業は鹿島建設を代表企業とするグループが落札しており、事業遂行のための特別目的会社(SPC)として桑名メディアライヴ株式会社(所在地:桑名市、資本金9千万円)が設立されている。市は桑名メディアライヴとPFI事業契約を締結しているが、各業務についてはノウハウをもっているSPCの構成企業にさらに委託されている。

事例図 5- 1 事業ストラクチャー図

1−1.アウトソーシング(PFI導入)に至った経緯

 旧図書館は旧市役所庁舎を利用していたことから、以前から狭隘化や機能面での限界、老朽化が指摘されていた。「第4次桑名市総合計画」(平成10年〜19年)では、市民アンケートで図書館建設に対するニーズが最も高かったことから、図書館を総合的な生涯学習施設の拠点として位置付け、整備・充実の方向性が明示された。一方、厳しい財政状況下においても地方分権の進展や多様化する住民ニーズに対応するため、「最少の経費で最大の効果を生み出す効率的で節度ある財政運営」を図る必要性も課題として挙げられていた。
 平成11年2月に、注目され始めていたPFI手法について桑名市でも研究するよう市長から指示があり、「PFI推進検討会」が設置された。検討会は各部局の主幹課長、まちづくり担当課長、行政改革推進本部事務局担当主幹等がメンバーとなり、政策課がリードする形で進められた。当時国内ではPFIの先進事例が数例程度しかなく、従来手法とPFI手法との比較検証が難しいという一面もあったが、厳しい財政状況と多様化・高度化する市民ニーズに対応するためには、PFIを導入する必要性があることが認識されるようになった。
 当初は図書館単独でのPFI事業化を想定していたが、図書館と同様に狭隘化や機能不足となっていた保健センターと勤労青少年ホームについても、「心とからだの健康を支える文化と交流の拠点」を基本コンセプトに移転・集約して整備することにより、トータルコストの削減や各施設の利用時間の違いを活用した諸室の兼用等が期待できるというメリットが見出され、複合施設化が検討されるようになった。

1−2.PFIを行財政改革の一環として位置付け

 平成11年7月には「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が制定されたことを受け、平成12年3月に策定された「新・桑名市行政改革大綱」では、PFI手法が行財政改革の一環として位置付けられた。
 平成12年9月にはPFI導入可能性調査を(財)日本経済研究所に委託し、施設規模や事業内容、民間事業者に移管する業務範囲、事業スキーム、リスク分担などの前提条件を設定したうえで、従来どおり市が設計・建設・運営・維持管理する場合とPFI事業として実施した場合とのコスト比較が行われた。また、この調査の中では、実際にPFI事業化した場合における民間事業者の参画意向等を把握するため、サウンディングも実施された。
 PFI導入可能性調査の結果、PFI事業として実施した場合にVFM(Value For Money)の達成が確認されたことから、平成13年4月には(財)日本経済研究所とPFIアドバイザリー業務委託契約を締結し、民間事業者の選定作業に移行した。

1−3.民間事業者の選定方法

 民間事業者の募集・選定方法としては、総合評価一般競争入札方式が採用されており、平成13年6月に学識経験者等5名、市職員4名で構成される審査委員会が設置された。
 本事業の実施にあたり財政的な観点からはコスト削減が求められたものの、図書館運営業務にウェイトが置かれたPFI事業であることから、安定的かつ長期継続的にサービスを提供できる民間事業者を選定する必要があった。そのため、価格面と事業内容面のどちらを重視して評価するかについては、各課から様々な意見が出された。
 定量審査の評価は100点満点中、「サービスの対価に関する事項(入札価格)」60点、「施設設計・維持管理に関する事項」15点、「図書館施設の運営・生活利便サービス施設に関する事項」15点、「事業の安全性に関する事項」10点という配点となり、価格面だけではなく、事業内容の提案部分についても十分に評価されるよう配慮がなされた。PFIの特徴の一つに「性能発注」が挙げられるが、民間の視点による創意工夫が反映されるよう、図書館の維持管理・運営部分に関する配点を大きくし、提案の自由度を高めたことは、結果的にコストの低減やサービス水準の向上という効果をもたらすことにつながった。

1−4.図書館運営業務の委託

 桑名市立中央図書館は「いつでも、どこでも、誰でも利用できる図書館」を基本理念としており、運営方針の中でも開館時間の延長や開館日数の増加、ITへの対応などが掲げられた。
 従来のように市の直営で夜間までの開館時間延長や開館日数の増加を実現しようとすると、嘱託を含め職員数を大幅に増員する必要があった。さらに、図書館の運営業務に携わるためには司書資格やITの進展に対応できる専門家が必要になり、市が直接人材を確保することは難しいと判断された。この点について、運営業務を民間事業者に委託した場合には、時間帯に応じたフレキシブルな人員配置や専門的な人材確保が可能になるということがメリットとして挙げられた。
 事業規模や業務量が大幅に拡大し、内容的にも民間のノウハウが活用できる部分が多いことが想定されたことから、PFI事業の業務範囲として図書館運営業務を含めることに関して、特に大きな問題となることはなく、むしろコストの低減やサービス水準の向上が期待できる点でPFIの導入は評価された。
図書館運営業務を含むPFI事業は全国初であったこともあり、市と民間事業者との業務の役割分担やリスク分担の検討については十分に時間がかけられ、図書館の業務内容を一つ一つ洗い出し、市と民間事業者のどちらがその業務を担当すればより効率的・効果的にサービスが提供できるかの検証が行われた。

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