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調査機関:株式会社地域計画建築研究所 |
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京都府町村会では、府内町村の事務系情報システムの導入・運用コストの削減、町村間での情報格差の是正を図るため、平成10〜11年に総合行政情報システム「TRY-X」を共同開発。導入・運用コスト削減という直接的成果を上げるとともに、導入自治体間で業務ノウハウの共有や業務の質の向上が図られるなど副次的な効果もみられる。また、市町村合併において関係町が既にTRY-Xを導入していたため、システム統合がスムーズに進んだ例もある。さらに、現在、府が進める「行財政連携推進会議」において、市町村の基幹業務システム共同化の中で、TRY-Xが注目されている。 | ||
3. 共同開発・共同アウトソーシングの効果3−1.コストダウン TRY-Xの開発費用は総額約5億円で、全額府内32町村(開発当時)で負担しているため、通常の導入コストと比較すればかなり安価な負担と考えられる。年間のシステムサポートの経費は、1自治体165万円となっている。導入自治体が増えれば増えるほど1自治体あたりの運用コストも抑えられるということになる。 3−2.ノウハウ共有を通じた行政業務の水準向上 共同開発・共同利用のもう一つの効果としては、導入自治体間でのシステム利用のスキルや業務に関するスキルの共有を通じた行政事務の水準向上があげられる。例えば、法改正等に伴うシステムの改修をめぐって、部会での検討を通じて事務処理の考え方や技術的な方法に関する各自治体の理解の共通化がうながされ、このことが事務のブレや無駄の排除に大きく貢献し、定型的な行政業務の水準向上に役立っている。 3−3.市町村合併におけるスムーズなシステム移行 平成16年4月に発足した京丹後市では、合併前に既にすべての町がTRY-Xを導入済であったことから、業務フローのすり合わせを含めた行政情報システムの統合はスムーズに行うことができた。定型的業務の標準化・共通化が、市町村合併にも効果を発揮したということができる。なお、合併に対応して、新たに旧町間の不均一課税や本庁−支所対応などの機能を持つ合併対応版TRY-Xシステムも開発された。 4. 住民の反応住民サービスの点では、直接的には、窓口におけるデータ検索時間の短縮により待ち時間の短縮が図られているという。なお、窓口対応全体で見ると、システムの効果はあくまでも窓口機能の一部であり、実際には来訪者をたらいまわしにしないことや、トラブルへの対応等が満足度の向上にとって重要と指摘されている。そのため、例えば園部町では総合窓口を設置して行政業務を幅広く理解した中堅職員を配置するなど、きめ細かなサービスの仕組みを合わせて用いている。 5. 行政情報システム共同利用の問題点と改善方法 共同事業としてのTRY-Xによるコスト削減の効果は、開発当初からある程度明らかであったが、これを通じた行政改革全体の推進の視点までは意識されていなかったという。しかし、地方自治体の厳しい財政状況とそれに伴う効率的で簡素な行政運営が求められる今日、町村会としても行政改革と結びつけた視点を意識するようになってきている。 6. 今後の展望 本事例は、町村会を通じた行政情報システムの共同開発・共同利用という全国でもユニークな事業であるが、市町村合併の中で、町村会の構成町村数が減少するという問題に直面しており、共同事業としての自立性の確保が重要となっている。前述した京丹後市での導入は、「町村」の枠を越えた事業の拡大としても位置付けられており、今後も加盟自治体の拡大が求められている。さらに、事業の自立性を高める方向で、平成17年4月には町村会から情報センター機能を分離・独立させる予定となっている。 |
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