宮城県 加美町

基本情報
市町村名 合併年月 合併形態
加美町 平成15年4月 新設合併
調査対象項目
水道 下水道
合併後市町村特徴
 加美町は宮城県北西部、仙台市から40kmに位置し、日本有数の穀倉地帯大崎耕土の一角を占めている。奥羽山脈を背に丘陵、高原、平野と豊かな自然条件に恵まれている。旧中新田町、旧小野田町、旧宮崎町の3町合併により、仙台市に次ぐ面積(460km2)を有し、町西部の丘陵・山岳地帯と東部の平野部では平均気温や積雪量に大きな違いがあり、西部は豪雪地帯の指定を受けている。地目別で見ると、74%を森林 (338 km2)、15%を農用地(69km2)が占めている。
 基幹産業は稲作と畜産の複合経営などの農業であるが、近年は地場産業振興やインターチェンジへの近接性を生かした工業の導入が積極的に進められている。平成12年度国勢調査によると、第1次産業の就業者数は2,562人 、第2次産業5,837 人、第3次産業6,249 人である。
 なお、加美町を構成する3町は、古くから地理的・歴史的結びつきが強く、人口規模も相似し、生活圏が同一であった。そのため、合併後の一体感が強い地域となっている。
市町村面積・人口等
市町村名 面積:
km2
人口:人  一般会計:
百万円
特別会計:
百万円
職員数:
現在
(H16)
加美町
【カミマチ】
460.82 28,053 14,005 10,065 387
合併直後
(H15)
加美町
【カミマチ】
460.82 28,289 17,025 10,040 399
合併直前
(H14)
(1) 中新田町
【ナカニイダマチ】
61.44 14,034 4,462 4,504 175
(2) 小野田町
【オノダマチ】
221.61 8,204 5,544 3,181 126
(3) 宮崎町
【ミヤザキチョウ】
177.77 6,302 3,863 1,864 105
連絡先
住所・連絡先 住所 宮城県加美郡加美町字西田三番5
電話 0229-63-3111
FAX 0229-63-2037
URL http://www.town.kami.miyagi.jp/
E-mail main@town.kami.miyagi.jp
全般的な内容
合併の契機
 平成10年5月に、地理的・歴史的な結びつきが強い宮城県加美郡4町(旧中新田町、旧小野田町、旧宮崎町、色麻町(しかまちょう))の町長・議長により、トップダウンの形で「加美郡町村合併研究会」が発足し、合併に関する研究活動が始まった。これは、厳しい財政状況と高齢化問題(※住民基本台帳に基づく平成15年3月31日現在の加美町での老年人口比率は26.95%。出典:加美町ホームページ)に対処するためには、各町個別ではなく、早急に4町が一体となって取り組む必要があるとの共通の問題意識による。
 研究会は3年間続けられ、広域合併の意義・効果、望ましい行政規模・区域等について検討された。その後、平成13年4月「加美郡四町合併推進協議会(任意協議会)」を設立、住民座談会やアンケート調査を経て、平成14年2月「加美郡四町合併協議会(法定協議会)」の設立となった。しかし、同年9月に色麻町が「加美郡四町合併に対する住民意向調査」を実施し、その結果合併期日の延期を要請、合併協議会は休止に至った。
 その後、同年11月に色麻町を除く「3町緊急合併住民座談会」が開催され、その場で3町での合併を推進するとの意見が多数を占め、同月改めて「中新田町・小野田町・宮崎町合併協議会(法定協議会)」を設立、平成15年1月の合併調印を経て、同年4月1日、「加美町」が誕生している。
公共料金決定の経緯
1.「サービスは高い方に、負担は低い方に」が原則
 旧3町での公共料金格差がさほどなかったこと、住民サービス向上と合併メリットを具体的に示す目的から、公共料金決定に際しては検討当初から「サービスは高い方に、負担は低い方に」を原則とし、全般的に合併後に負担が増えないよう調整した。
 なお、合併時に上下水道料について引き下げられたが、保育料は旧3町で階層区分が異なっていたため、合併時に国の基準への統一が行われ、その結果階層の境目にあった住民の一部で、料金が高くなった例もある。

2.住民の意見の反映
 住民の意見は合併協議会の住民委員を通じて取り入れ、アンケート等による住民意見の聴取は行わなかった。なお、任意協議会開設後に2回開催した住民座談会では、合併による運営の効率化等を通じて「サービスは高い方に、負担は低い方に」の原則で料金を決定する旨を説明した。

3.合併支援プラン活用について
 合併支援措置としての特別交付税措置を、上下水道の公共料金格差是正のために活用した。

4.住民への周知方法
 任意協議会設立後にパンフレットを作成し、住民への説明、周知に努めた。
財政状況と公共料金の関係
 合併支援措置としての包括的な特別交付税措置を、上下水道事業における公共料金格差是正などに活用した。
 しかし、その後は退職者の補充抑制等の合理化効果などにより、料金格差是正分をカバーしている。そのため、現時点では、上下水道料金の一部引き下げが今後の財政状況に影響を与えることは考えられない。

 なお、合併直前での3町の一般会計合計と、合併直後の合計とでは、30億円程度の差が出ている。これは、旧小野田町で合併前後2ヵ年の継続事業で実施した文化会館施設建設事業と、合併後の目玉事業として新町建設計画において推進された地域イントラネット整備事業、及び合併前の執行残が加わっているためである。
その他
 住民票等の取得や各種届出等における利便性が向上している。例えば旧小野田町に住んでいる住民が旧中新田町に働きに出ている場合、就業場所の旧中新田町の窓口で用が足せる。また、夜間や休日でも、予約によって住民票の取得等ができる。
水道料金
市町村名 料金 料金の単位・その他
現在
(H16)
加美町
【カミマチ】
4,095(円)
※消費税込み
※口径13mm 20m3/月で記載
[現在の水道料金算定式]
※口径13mm 20m3/月の場合
(10 m3超過使用)
@基本料金1,900(円)≦10 m3
A超過金額=超過水量(m3)×超過料金(円)
=10 (m3) ×190(円)
=1,900(円)
Bメーター使用料=100(円)
C消費税=195(円)
以上より、
合計水道使用量=@+A+B+C
       =4,095円
合併直後
(H15)
加美町
【カミマチ】
4,095
合併直前
(H14)
(1) 中新田町
【ナカニイダマチ】
4,095
(2) 小野田町
【オノダマチ】
5,145
(3) 宮崎町
【ミヤザキチョウ】
4,515
公共料金決定の経緯
1.「サービスは高い方に、負担は低い方に」が原則
 住民サービス向上と合併メリットを具体的に示す目的から、「サービスは高い方に、負担は低い方に」という原則が、合併協議会当初から共通認識としてあった。水道料金もその原則に則り、3町の中で最も安い旧中新田町の料金(基本料金、超過料金共)に合わせて調整を進めた。
2.住民の意見の反映
 住民の意見は合併協議会の住民委員を通じて取り入れる形とし、アンケート等を活用して住民意見を料金へ反映するというプロセスは採用しなかった。なお、住民には料金決定の考え方、すなわち合併による運営の効率化を通じて「サービスは高い方に、負担は低い方に」を基本に料金を決定する旨を、任意協議会開設後に2回開催した住民座談会等において説明している。
3.合併支援プラン活用について
 合併支援措置としての包括的な特別交付税措置を活用し、一般会計から水道事業会計に対して繰出している。
効果の検証
1.住民の反応
 料金低下に伴う住民負担軽減が、もっとも明確な合併の効果である。アンケート等の調査を行っていないので、住民の意見等は特に聞こえてこないが、全体として淡々と新料金が受け入れられており、納得しているようである。
2.経営の効率化
 合併後に合理化(上下水道課で計2名の削減等)が行われている。それに加えて、合併後に水道使用量が若干増加しており、水道事業としての収入は増加している。そのため、合併後3年目、すなわち平成17年度以降は一般会計からの繰出に頼らなくてもよい状態が見込まれている。
財政状況と公共料金の関係
1.合併前の水道事業
 合併前の水道事業は、@旧中新田町では4割が県の公水(大崎広域水道)から受水、6割が自前の井戸による調達、A旧小野田町では、ほとんどを県の公水(大崎広域水道)からの受水、B旧宮崎町では全量自前調達となっていた。自前の水源を持たない旧小野田町は、全国的に見ても水道料金が高い町であった。そのため、国の「高料金対策事業」による交付税を受け、3町の中では唯一、合併前に一般会計からの繰出が行われていた。
2.合併後の水道事業
 合併支援措置の特別交付税措置活用による、水道事業会計に対する一般会計からの繰出は次の様になっている。
○平成15年度:合併に際して、@料金を低い町に統一したこと、A旧中新田町では一部の施設で資産減耗をしていない期間があり、調整が必要であったこと、B平成14年度の執行残の処理もあったことから、一般会計からの繰出は1億700万円であった。
○平成16年度:合併による事業のスリム化の効果と、前年度に見られた特別支出がなかったため、一般会計からの繰出は1,300万円に留まった。
○平成17年度:合理化等により、一般会計からの繰出に頼らない経営が可能との見通しである。
 なお、旧3町共に、合併前に水道施設整備はほぼ完了しており、また施設整備に際して生じた借入金(水道事業債)もほぼ完済されていた。
3.合併後の整備事業
 加美町は面積が広く、水源も比較的遠い。そのため、受水・送水状況を一元的に監視できるインターネット接続の中央監視システムを、平成15年〜平成16年度の2ヵ年事業として、4,700万円かけて整備している。このシステムは、今後の一層の合理化も考えた、水道関連で唯一合併後の大きな整備である。
今後の展望
1.水道料金改定について
 基本的には合併後3年間は現行料金を維持し、その間に適正料金について検討することになっている。水道は決算主義であり、現時点で平成15年度決算しか出ていない状況のため、平成16年度決算を見た上で、正式に今後の料金体系のあり方を決定することになる。ただし、平成17年度以降も、現行水道料金体系で、一般会計からの繰出なく事業を継続できる見込みとなっている。
2.完全なシステム統合について
 旧3町の事業を一つに統合しているものの、合併後も旧3町の配管は接続されておらず、実質は旧3町別々のシステムを維持したままである。そのため、旧3町の配管を接続した形での正式な事業統合に関して、現在コンサルタントに調査を委託している。
3.配管設備更新について
 旧小野田町の一部では石綿管が使用されていたため、「老朽管更新事業」が平成18年度まで行われている。それ以外の配管は、平成12年度に更新作業が行われた旧中新田町を除くと、あと10年ほどで耐用年数に達する。しかし、現時点ではそれらの修繕・更新費用について、具体的な検討に入っていない。
その他
合併後も、順調に事業が進んでいる。
下水道使用料
市町村名 料金 料金の単位・その他
現在
(H16)
加美町
【カミマチ】
2,467(円)
※消費税込み
※20m3/月で記載
[現在の下水道料金算定式]
※20m3/月で計算
(10 m3超過使用)
@基本料金=1,100(円)≦10 m3
A超過金額=超過使用量(m3)×超過単価(円)=10(m3)×125(円)=1,250(円)
B消費税=117(円)
以上より、
合計下水道使用量
=@+A+B
=2,467(円)
合併直後
(H15)
加美町
【カミマチ】
2,467
合併直前
(H14)
(1) 中新田町
【ナカニイダマチ】
2,520
(2) 小野田町
【オノダマチ】
2,572
(3) 宮崎町
【ミヤザキチョウ】
2,572
公共料金決定の経緯
 もともと下水道料金では、旧3町の格差は無いに等しかった。しかし、水道料金と同様に、合併協議会での共通認識、すなわち「サービスは高い方に、負担は低い方に」を原則として調整が行われた。
 下水道料金は基本料金、超過料金の二部料金制となっており、それぞれで低い料金に統一されている。月あたり20m3の使用を例にすると、基本料金は旧小野田町、旧宮崎町の1,100円に統一されている。また、超過料金は旧中新田町の125円に統一されている。
 料金決定に際する住民意見は、公共料金全般と同様に、合併協議会の住民委員の意見を通じて取り入れている。
効果の検証
1.住民の反応
 水道料金と同様に、料金低下に伴う住民負担の軽減が最も明確な合併の効果である。特にアンケート調査などを通じて住民意見を聞いてはいないが、全体として淡々と合併後の事業や新料金体系が受け入れられており、納得しているようである。
2.経営の効率化
 合併後の合理化等の効果もあり、合併前と同様に下水道債の元本償還等に充てる目的での一般会計繰出は必要なものの、料金統一後も比較的安定的な経営状態が保たれている。
 また、集中処理施設導入を検討したが、加美町は面積が広いこともあり、旧町単位の合併前の下水処理体制を維持することが、費用の面でも効果的であると判断している。
財政状況と公共料金の関係
1.財政状況
 合併前の旧3町それぞれの下水道事業特別会計は、いずれも一般会計からの繰出が行われていた。それは、下水道事業自体が非常に設備投資負担が大きく、下水道債の元利償還のためには、一般会計からの繰出を充当する必要があるためである。実質的に下水道事業での独立採算はまず無理である。
 合併後も引き続き、下水道債の元利償還に充当する目的で、一般会計からの繰出が行われている。また、料金引き下げによる影響に対応するため、公共料金格差是正のための特別交付税措置も利用されている。平成15年度、平成16年度は、共に計6億円ほどが一般会計からの繰出されているが、設備維持管理費用等はおおむね徴収した下水道使用料でまかなえているため、事業の運営状況は安定している。
2.施設統合等の事業投資
 合併後も、旧3町の下水処理体系をそのまま継続している。合併を期に、近接する施設を統合した集中処理施設建設についても検討を行ったが、統合施設を新たに建設する場合の方がコスト高となることが判明したため、既存の処理施設や処理管轄を維持している。
 また、未整備地域が残っており、合併前に旧3町ごとに計画された事業を、そのまま合併後も計画に沿い実行・整備することとなっている。
今後の展望
 3年間現行料金を維持し、その間に適正料金について検討することになっている。現状の下水道事業から判断するに、
@合併前の処理施設を継続使用でき、集中処理施設といった新たな投資負担の必要がないこと
A下水道事業債元利償還のための一般会計からの繰出は現状のレベルで安定していくと予想され、また設備維持管理費用等はおおむね徴収した下水道使用料でまかなえていること
 などの理由から、今後特に下水道事業の会計状況に変化は生じず、現在の料金体系や整備計画を維持することが可能とみられる。
その他
合併後も、順調に事業が進んでいる。

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