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 総合研究開発機構の江崎理事様をコーディネータにお迎えし、「道州制」、「地域の自立」をキーワードに全国6ブロックからの論客の方々による活発な議論が行われました。



(以下、敬称略)

■総合研究開発機構 江崎
 本日のパネルは大きく3つに分けて、いろいろな観点から議論をすすめていきたい。
 

パート1

各地域での地方分権、道州制議論の動き、論点の紹介  
パート2 具体的問題、観点
パート3 今後のシナリオビジョンについて
 中央政府の現状から見ても、地方分権化というのは避けられない。国の債務保証というのは、国債のお金を集めて、他に配分をしているという構造になっている。この体制への意識改革が地方分権が議論されている背景にある。

各地域での地方分権、道州制議論の動き、論点の紹介

■(財)青森地域社会研究所 竹内
  東北で活発に動いているのは、東北電力主導の東北経済連合会である。東北一体となって、グローバル経済を目指した道州制を積極的に進めていくべきだという意見が出ている。
  青森県は道州制のフロントランナーになるという野望があったが、知事交代後、道州制に対して消極的になった。先日、「地方分権フォーラム」を行ったが、「道州制」とは銘打っておらず、道州制に対して慎重な姿勢を崩していない。
  秋田県内において道州制の認知度調査があり、理解は進んでいるが、関心・盛り上がりが低いという結果であった。「道州制」はピンとこないが、東京一極集中はおかしいというのが、皆が共通して思っていることである。交付税がらみの経済産業構造から自立し、それなりの経済発展、新たな経済ステージを求めようという意識はある。
  私見だが東北の州都は「仙台」が想定される。これも、東北電力が道州制推進に力を入れている一因だと思われる。

■(財)北陸経済研究所 酒井
  北陸では、北陸三県の富山、石川、福井という区割りは、示された案の中にはない。新潟を入れた四県と富山・石川が中部に入って、福井が関西に入るといった案があって、どういう組み合わせになるかという区割り論が先行することで、本来の議論の妨げになっているような感じがしている。
  北陸三県は一体性をもっており、統計データを示しても、三県同士では高い相関がみられる。逆に言えば、それ以外の地とは相関が見られないという傾向を持っている地域である。そういった意味からも「地方分権下での新たな国のかたち」など広い範囲で考えることを始めるべきではないかという議論がある。
  北陸経済連合会(2003年)が対会員企業に道州制についてアンケートをしたところ、7割弱が「道州制が必要」だと回答している。また、平成19年8月に「北陸の未来と道州制を考えるシンポジウム」を開催しており、民間を含めた道州制に対する公式の取り組みがスタートしたというような段階である。
  市町村合併のお手伝いをしてきたシンクタンクの立場からも、各論部分の、州都をどこにするのかも含め、手法を取り違えると、上手くいかないという警戒感がある。

■(社)地域問題研究所 杉戸
  中部では、知事を先頭に愛知県及び中部経済連合会を中心とした経済界においては、道州制に対して積極的である。但し、その動きに符合して、地域の中で道州制の議論が盛り上がっているかというと、必ずしもそうではない。
  これまで「中部圏開発基本計画」で中部圏の範囲が設定されているが、国の各行政機関管轄はバラバラとなっており、各機関によって範囲が異なっている。道州制に関しても、9道州案では6県、13道州案では4県となっている。中部の範囲概念が明確ではないのが、地域の中で盛り上がりに欠ける一つの要因であろう。
  各県によっても、広域に対する見方には、かなり違いがある。愛知、岐阜は、トヨタ自動車を核に経済圏や生活圏の広がりがあり、静岡、三重は、県自体が東西、南北に分かれている。
  地方分権の進展により、市町村に権限が移譲され国と直接、折衝していく場面が増えてきており、県が邪魔になってきている側面もある。県の存在感というものが、今後、広域行政体を考える上で、どうなっていくのかという意味でも、再編という必要性が出てくる。
  海外企業の誘致は、これまで各県単位で行ってきたが、トヨタの成長力をバックに、中部経済産業局が中心となって、「グレーター・ナゴヤ・イニシアティブ」という県境を越えた組織を作り、海外企業誘致に取り組んでいる。
  広域的で取り組むことが求められる国際観光を例にあげると、東京と京都がゴールデンルートと呼ばれており、中部は中継地点という位置づけであったが、海外ビジネスマンの増加傾向を受け、「中部広域観光推進協議会」という組織を立ち上げ、海外と直接プロモーションを展開するという活動を行っている。

■(社)関西経済連合会 栗山
  関西経済連合会の道州制に関する議論は古く、1955年に1回目、1969年には2回目の道州制構想を提言している。その他にも府県連合制度などを提言している。最新の提言が2003年に発表した関西モデルの提案というものである。
  道州制を論じるときに気をつけなければならないことは、同じように「道州制」と称しても、論者によって内容は様々であり、未だ確立された定義はないということである。賛否を表明する場合でも、このような道州制ならば賛成等、具体的に指摘しないと、議論はすれ違うことになる。
  中央集権体制を打破する分権改革は、地方から声を上げて中央政府に必要な制度改革を迫るという行動を起こさなければ実現しない。四年前に、関経連が呼びかけをして、関西の府県、政令市と経済団体による検討組織が発足し、昨年(2006)には、知事や市長が分権改革について直接意見交換をし、必要な意思決定・合意形成を行える組織に衣替えをした。
  知事、市長の考え方も、まだ相当開きがあるというのも一方の事実であり、整理をしてみたところ、以下の三つに分類できるように思う。それぞれ私が勝手に名づけたものである。

@分権改革懐疑派

  グローバル時代には日本の力の結集こそ必要であり、分権すれば国の競争力が低下するのではないか。分権など唱えず、現状の仕組みの中でうまく対応したほうが住民のためになる。
A分権改革悲観派
  分権は必要だが、現状の強固な体制はそう簡単に崩せない。広域連合をつくっても関西だけに分権をしますということにはならない。それならば緩やかな連携で十分であり、道州制を導入するとしても国に決めてもらうしかない。
B分権改革決起派
  分権改革は断固実現するべきであり、かつ、地方は結束して行動しなければ、新しい分権体制や道州制にはならない。現在の国主導の道州制論議は信用できないし、 分権推進の立場からは危険ですらある。

■(社)中国地方総合研究センター 和田
  中国地方の市町村数の減少率は64%で、最も高い広島県では73%で全国トップである。市町村合併が進んでおり、基礎自治体が、一定の基盤を強化していったと言える。こうした状況下で広域自治体である県を再編していくことが、中国地方にとっては、分権改革の次なるテーマである。
  各県では、慎重な意見を持っている知事もいるが、目立った反対意見は見られない。中国地方知事会においても、国と地方の役割分担をきちんとやっていくのであれば、道州制導入については、賛成であるという考え方が基本的な状況である。
  特に道州制に対して、積極的な意見を持っているのが、岡山、広島である。広島県で特徴的なのは、基礎自治体への事務権限移譲を積極的に進めている点である。今年度中に100本近い事務事業が権限移譲される。既にパスポートの発券や、県道の管理(三次市)などが移譲された。
  基礎自治体との関係が変化していくことによって、県の果たすべき役割が大きなテーマになっている。市町村にかなり権限を渡したけれども、国から、県に権限が移っておらず、スカスカになってきているのではないだろうかという危惧がある。国と地方の関係を積極的に議論するなど、制度のあり方を詰めていこうということで、現在、研究を継続している状況にある。
  経済界においてリードしているのは、中国経済連合会。平成16年の報告書「広域的な地方自治の実現に向けて」では、道州制導入を前提とした国と地方の関係、財政制度のシミュレーションに触れ、早急に一堂に介した議論をしていかなければならないといった問題提起もしている。更に、昨年、「中国地方新生ビジョン」を作成し、行動指針として道州制の継続的な検討、地域への情報発信を掲げている。
  各自治体での検討を受けて、道州制の必要性に関するシンポジウムを通じ、住民に啓蒙活動を進めているが、まだまだ住民は、そこまでのレベルには至っていないのが現状である。
■(社)九州経済連合会 田嶋
道州制の実現や地方分権社会では、地方自治を担う受け皿としての基礎自治体の役割というのは非常に重要である。九州では1万人未満の市が多数あり、そういう市町村が、どうやって行政能力を強化するのかということが、大きな問題である。どのブロックでも同じ問題があるのではないか。

■総合研究開発機構 江崎
 各地域で温度差があり、また、地域の中の県の間でも、温度差がある。地域には、区割り、歴史的な地域の一体感、県域を越えての経済圏というのができており、そういうものをどうするのか。区割り論に脚を取られると、なかなか議論が進まないというのが、パネラーが示唆されたことである。では、そういった中で、道州制とは何のために考えるんだ、やるんだ、という論点についても、いくつか面白い問題提議があった。
中央集権を打破しないと、いろいろな行政、経済活動が進まないという状況がある。それから、このまま道州制に移行するということでは、現在ある格差がそのまま残ってしまうのではないかという話もあった。
 格差の中で一番象徴的なものは、社会資本(インフラ)である。九州内の高速道路が完成しないと、地域としては一体的な発言ができないというご指摘があったが、そういった例が典型だと思われる。
 国際的観点という見方も示唆された。典型が観光であるが、地域としての一体性がないと、外から見ると魅力がない。
 更に、観光だけではなく、企業誘致等を考えても、地域として一体的なある程度の広さがないと上手くいかないのではないか。中国、韓国がこれから発展していく中で、日本として取り残されないためにはどうすればいいのか。各地域で成長力をあげていくことが必要ではないか。逆に、各地域ばらばらだと、ますます日本の国際競争力が低下するのではないか、といった意見があった。

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